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未収入金(未収金)とは?売掛金や未収収益との違いや仕訳方法、処理する際の注意点を解説

未収入金(未収金)とは?売掛金や未収収益との違いや仕訳方法、処理する際の注意点を解説

未収入金(未収金)とはどういう性質のもので、どういう時に用いられるかについて解説しています。混同しやすい「売掛金」や「未収収益」との違い、仕訳する際の方法や実際の仕訳例、会計処理する際の注意点についても紹介しています。未収入金(未収金)について調べている方は参考にしてください。

未収入金(未収金)とは

未収入金(未収金)とは

未収入金とは、事業活動の本業以外で収入されるべき債権のことです。継続的な性質のものではなく、一時的な取引によって収入されるべきものを指します。

 

例えば、機械設備や土地建物などの固定資産を売却した際に用いられます。未収入金は「未収金」とも表現されますが、同じ意味の勘定科目です。企業の決算書類のひとつである貸借対照表では、資産の部の内訳に記載される流動資産に位置付けられます。

 

未収入金のうち、流動資産には1年以内に回収すべき債権を記載するため、1年を超えて回収すべきものは「長期未収入金」と分類されます。

 

未収入金と混同しやすい勘定科目

未収入金と混同しやすい勘定科目

未収入金と混同しやすい勘定科目として、「売掛金」と「未収収益」があります。

 

どちらも将来的に支払いを受け取るべき債権ですが、会計処理上の取り扱いにおける違いを解説します。

 

売掛金との違い

売掛金とは、事業活動の本業で発生する債権です。サービスの提供や物品の販売などで取引したものが対象となります。

 

これに対し、未収入金は固定資産や有価証券の売却などによって得た債権であり、本業以外の活動で発生する点で売掛金と異なります。

 

貸借対照表では、売掛金も未収入金と同じ流動資産の部に記載されますが、勘定科目は区別して記載しなければなりません。

 

未収収益との違い

未収収益とは、事業活動の本業以外の活動により継続的に発生する債権です。未収入金は本業以外の一時的な取引で発生する債権であるため、継続的に発生する未収収益とは違いがあります。例えば、貸付金に対する受取利息や受取家賃などが挙げられます。

 

企業によっては未収収益を未収入金として計上している場合がありますが、内容が未収収益であれば「経過勘定」として期末などに会計処理が必要な点に注意しましょう。経過勘定については後で詳しく解説します。未収収益は、貸借対照表ではその他の流動資産に分類されます。

 

未収入金の仕訳方法

未収入金の仕訳方法

ここでは、固定資産を売却したり、不動産を貸し付けたりした場合を例として、未収入金の仕訳について解説します。

 

いずれも、本業以外の活動に関する仕訳である点に注意しましょう。

 

固定資産を売却した場合の仕訳

本業の商取引以外に、土地や建物、機械設備などの固定資産を売却する場合があります。ここでは、土地を売却した際の仕訳を説明します。

 

まずは、売却と同時に代金が当座預金に振込まれた場合の仕訳は次のとおりです。

 

借方貸方
当座預金100,000土地(固定資産)90,000
固定資産売却益10,000

 

借方に支払いを受けた当座預金を、貸方に土地を仕訳します。土地を簿価よりも高く売却できた場合には、固定資産売却益が発生します。

 

一方、売却代金を売却時に振込みや現金で受け取るのではなく、後日受け取る場合は、未収入金に計上します。

 

借方貸方
未収入金100,000土地(固定資産)90,000
固定資産売却益10,000

 

借方の勘定科目が、当座預金から未収入金へ変わっていることに注目してください。

 

なお、土地が簿価よりも安値で売却した場合には、固定資産売却損が発生します。

 

借方貸方
未収入金90,000土地(固定資産)100,000
固定資産売却損10,000

 

この場合には、借方の未収入金と固定資産売却損の合計と、貸方の土地が同じ金額となります。

 

不動産を貸付けた場合の仕訳

保有している不動産を貸付けて家賃を受け取る場合の仕訳は次のとおりです。

 

借方貸方
未収入金50,000受取家賃50,000

貸付けを行った時点で実際に家賃を受け取っていない場合は、未収入金で仕訳をします。この後、支払いを受けた時点で未収入金が現金預金に振替られて残高が減っていきます。会計の処理上、会計年度をまたぐと経過勘定の仕訳が必要となる場合があるため気をつけましょう。

 

本業ではない収入が発生した場合の仕訳

本業ではない収入が継続的に発生する場合、勘定科目を未収収益として計上します。金銭の貸付けが本業でない場合、貸付利息は次のように扱います。

 

借方貸方
未収収益10,000貸付利息10,000

未収収益においても、会計年度をまたいで利息が発生する場合は経過勘定の処理が必要です。

 

未収入金の決算時(会計処理時)の注意点

未収入金の決算時(会計処理時)の注意点

ここでは、未収入金を会計処理する際の注意点を解説します。

 

発生主義で会計処理を行う

企業の会計処理では決算状態を正確に把握するため、発生主義で行います。固定資産の売却など支払いを受ける債権が発生した時点で、未収入金を計上するのが特徴です。

 

売却代金として実際の現金の支払いや預金への振込みを処理の起点とする現金主義とは異なる点を押さえておきましょう。

 

回収予定日が経過した残高や取引先の信用状態を確認する

未収入金に計上した後は、回収予定日の確認が必要です。予定日が到来したにもかかわらず回収できない場合は、未収入金の残高や取引先の信用状態を確認します。

 

取引先に理由を確認するとともに、信用状態に問題がないか調査が必要です。取引先の事務処理が原因ではない場合は、理由があって回収が翌会計年度に繰り越されるのか、そもそも回収不能なのかの見極めが必要です。

 

会計上、取引と同じ会計年度内に回収できないことが明らかな場合は、貸倒処理が必要です。また、翌会計年度以降にも回収できない恐れがあると判明したときは、貸倒引当金を計上する必要があります。未収入金の回収可能性の検討は、資金繰りだけではなく会計処理上も重要な点は留意しておきましょう。

 

経過勘定の処理を忘れずに行う(未収収益を未収入金として扱っている場合)

未収収益を便宜的に未収入金として扱っている場合には、見越しや繰り延べなどの経過勘定の処理が必要です。本来は債権が発生した時点で未収入金に計上しますが、会計年度をまたぐ場合には翌期の収益として整理します。

 

経過勘定とは、当該会計年度の損益を正確に把握するために、損益勘定の見越しや繰り延べを財務諸表に表示する作業を指します。見越しとは、当該会計年度中に収入や支出がなくとも、発生主義の観点から当期の費用や収益として処理することです。反対に繰り延べでは、当該会計年度中に現金預金のやりとりが発生したものを翌会計年度以降で計上します。

 

例えば、3月決算を採用している企業で、貸付金に関する利息が毎月2万円ずつ発生し、毎年12月に1年分の受取利息となる24万円を一括して振込みで受け取っている場合を考えてみましょう。この場合で、3月の決算時に行う仕訳(決算整理仕訳)は、以下の通りです。

 

借方貸方
未収収益60,000受取利息60,000

 

この場合、実際に入金されるのは翌会計年度の12月ですが、決算期までの1~3月においても毎月の受取利息は発生しているとみなし、当期の利益として仕訳計上が必要です。そのため3ヶ月分の6万円を借方に未収収益として記載し、貸方に受取利息を見越して仕訳します。

 

財務諸表では貸借対照表の資産の部の流動資産に未収収益、損益計算書の営業外利益に受取利息として記載します。

翌会計年度の期首である4月1日には、見越しの処理を行った決算整理仕訳とは反対の再振替仕訳を行います。

 

借方貸方
受取利息60,000未収収益60,000

 

また翌会計年度の12月に代金が振り込まれたときには、次の仕訳を行います。

 

借方貸方
当座預金240,000受取利息240,000

 

未収入金は買掛金と相殺できる

未収入金は買掛金と相殺でき、主に債権回収のための手段とされます。未収入金と買掛金を相殺するには、当事者同士が同じ種類の債権を保持していることが条件となります。同じ種類とは、決算上の勘定科目が同種類に分類されることです。未収入金の同種類の勘定科目は未払金であり、買掛金の同種類の勘定科目は売掛金となります。

 

未収入金は本業以外の一時的な取引で生じた未回収の債権であり、本業の取引で発生する売掛金や本業以外の継続的なサービスで発生する収益の回収していない未収収益とは異なるため、気をつけましょう。未収入金と買掛金は勘定科目が異なるため、相殺には基本的に当事者間の了承が必要です。了承を得ずに処理すると、お互いの会計処理に齟齬が生じ時間がかかる場合があります。

 

なお、相殺を持ちかけた方の債権を自働債権、相殺される方の債権、相手方の債権を受働債権と呼びます。例えば、回収すべき未収入金が20万円、支払うべき買掛金(相手方にとっては売掛金)が10万円あるケースで相殺を行うと、差し引きで10万円のみを回収することになります。この場合、未収入金を買掛金で相殺すると持ちかけた場合、未収入金が自働債権、相殺される側の買掛金、相手方にとっての売掛金が受働債権です。

 

事務処理では、当事者間で相殺の事実が分かるように領収書を発行して帳簿に記載します。継続的な取引を行っている場合は、相殺したうえで入金処理をしたことを請求書に明記しておきましょう。単発的な取引の場合は、相殺履歴がわかる領収書を作成します。いずれも摘要欄に相殺した金額を明確に記載しておくことで履歴を残します。

 

実際に未収入金と買掛金を相殺する必要がある際には、弁護士や税理士などの専門家に相談して慎重に進めましょう。

 

まとめ

未収入金(未収金)とは?売掛金や未収収益との違いや仕訳方法、処理する際の注意点を解説

未収入金とは、本業以外の一時的な取引で発生した未回収の金銭債権のことであり、固定資産の売却や、土地など不動産の貸付けなどによる債権が該当します。本業の取引で発生する売掛金や、本業以外の継続的なサービスで発生する未収収益とは異なるため、区別しておきましょう。

 

未収入金を計上する際には、発生主義に基づいているか、予定通りに回収できているかといった点の確認が必要です。回収予定日が過ぎている場合は、残高や相手先の信用状態を調査すると同時に、当該会計年度での貸倒処理や貸倒引当金の設定など適切な会計処理を確認して進めます。貸付利息や地代家賃などの未収収益を未収入金の勘定科目で計上している場合は、経過勘定の処理が必要となる点も把握しておきましょう。

  • 世取山 大輔

    監修者

    世取山 大輔

    株式会社AGSコンサルティング
    関西エリア 京都支社長・公認会計士

    監査法人にて約12年間にわたり、上場企業や上場準備企業の監査等を担当。 その後2018年にAGSグループに入社。 現在は上場準備の支援を中心に、デューデリジェンスや企業の成長戦略の立案や資金調達の計画見直しを支援している。

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