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税理士試験に合格後も税理士登録をしないのはなぜ?

税理士試験に合格しても税理士登録をしないのはなぜ?

税理士試験に合格しても、税理士登録をしないと税理士として仕事をすることはできません。しかし、中には税理士登録をしないで働いている人もまれに存在します。一生懸命勉強して税理士資格を取得しても、税理士登録をしない人がいるのはなぜでしょうか。その理由や、税理士登録をする際の手続きになどについて紹介します。

税理士とは

税理士は、税理士法に定められた国家資格で税の専門家です。税理士法では、税理士となるには、「税理士となる資格を有する者が、日本税理士会連合会に備えられている税理士名簿に登録しなければならない」と定められています。

 

税理士になる資格を得るには、税理士試験に合格した上で2年以上の実務経験が必要で、税務署や会計事務所、一般企業の経理部門などで租税または会計に関する一定の業務を2年以上行わなければなりません。

 

税理士試験とは

税理士試験は、会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目と、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち、3科目(所得税法、法人税法のいずれかは必須)を選択する計5科目の試験で、年に1回行われます。

 

各科目とも60%以上得点する必要がありますが、一度に全科目に合格する必要はなく、数年かけて科目合格を積み重ねていくことができます。

 

出典:日本税理士会連合会「税理士の資格取得」

 

税理士だけができること

税理士には「独占業務」があり、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つは税理士だけが行える仕事です。税理士試験の合格者など、税理士登録をしていない者が税理士の管理・監督なくこれらの業務を行えば、税理士法違反になります。

 

ただし、税理士事務所などに勤務している場合、顧客から依頼される業務は、事務所などの責任者である税理士の資格で行うことができます。税理士試験の合格者が、これら3つの関連業務に補助者として関わることは問題ありません。

税理士登録をするには

税理士登録をするには、登録したい税理士事務所などの所在地がある地域に設立されている税理士会に所定の書類を提出する必要があります。登録の適否は、税理士会による面接を含めた登録調査と、日本税理士会連合会による調査・審査を経て決まります。

 

税理士になるにあたって調査を受けなければならないという負担はあるものの、税理士登録をしない税理士試験合格者がいるのはなぜでしょうか。主に3つの理由が挙げられます。

 

税理士試験合格者が税理士登録しない理由

独立開業する気がない

税理士に登録する必要があるかないかは、独立開業する意思の有無が大きいです。登録を受けた税理士でなければ、税理士事務所を開業できないからです。逆に、独立を視野にいれていなければ、税理士登録をする必要性は薄くなります。

 

従前は、税理士登録をしてすぐに独立するケースもみられましたが、近年は、税理士法人の大規模化、全国化が進み、独立後の個人事務所では扱えない規模の案件に関わることもできるなど、税理士法人で活躍するメリットも大きくなってきています。個人で事務所を開きたい強い意思がなければ、税理士登録をしなくても、税理士の監督の下で働くことができます。

 

税理士登録に費用がかかる

税理士登録をするには、登録に必要な費用を負担する必要があります。

  • 税理士会登録免許税(6万円)
  • 税理士会登録手数料(5万円)
  • 税理士会入会金(各税理士会で一律4万円)
  • 税理士会会館建設費(東京税理士会は2万円) など

※費用は各税理士会で異なる場合があります。

 

このほか、所属する税理士会の入会金や年会費も必要になります。資格を維持するためには毎年数十万円がかかり、勤務先が負担しない場合は自身で支払わなければなりません。

 

出典:日本税理士会連合会 登録に必要な提出書類等

 

提出書類が多くて煩雑

税理士登録のためには、少なくとも10種類以上の書類を集めて申請しなければなりません。多い人だと30種類を超え、書類を準備するだけでも時間がかかるため、登録をためらう人がいる可能性があります。税理士登録のためには、2年間の実務経験の実績を細かく記録した書類の提出も必要です。

 

税理士登録の際に必要な書類は以下です。

 

全申請者が提出を要する書類

1.税理士登録申請書

2.登録免許税領収書(6万円)

3.登録手数料(5万円)

4.顔写真

5.本籍の記載のある世帯全員の住民票の写し(マイナンバー記載がないもの)

6.身分(身元)証明書(本籍地の市区町村が発行したもの)

7.資格を証する書類(原本との照合確認を受ける)

8.履歴書

9.誓約書

10.税理士会会長宛ての誓約書

11.直近2年分の確定申告書のコピー(確定申告をしていない場合は住民税の(非)課税(所得)証明書)

12.はがき(日本税理士会連合会所定)

 

実務経験期間の充足を確認する書類(試験合格者と試験免除者が対象)

13.在籍証明書

14.在籍証明書に係る印鑑登録証明書

15.源泉徴収票または確定申告書のコピー

16.税理士事務所(税理士法人)と会計法人の関係について

17.職務概要説明書

18.勤務時間の積上げ計算書

19.大学院通学状況証明書

 

事務所の設置を確認する書類(開業税理士や税理士法人の新設や従たる事務所を設置する社員税理士が対象)

20.税理士法人(事務所)の設置に関する書類

 

必要に応じて提出が必要な書類

21.(勤務している又は勤務していた)会社の履歴事項全部証明書

22.無職期間の事情説明書

23.退職理由説明書

24.業務執行に関する誓約書

25.退職同意書

26.旧姓使用承認申請書

27.戸籍抄本又は個人事項証明書

28.税理士法人の社員資格証明申請書

29.社員税理士・所属税理士同意書

30.税理士法人の定款(案)の写し

31.登録抹消した理由及び再登録する理由書

32.早期退職の理由書

※このほかにも、必要に応じて提出が必要な書類がある場合があります。

 

出典:日本税理士会連合会 登録に必要な提出書類等

 

税制改正大綱により税理士登録に必要な書類の一部をマイナンバーで代替可能に

令和6年度税制改正大綱では、マイナンバーカードを活用した税理士の登録事務の利便性向上について触れられています。マイナンバーカードを活用すれば、登録の際に必要な戸籍抄本と住民票の写しの添付が不要になります。

 

日本税理士連合会や税理士会に電子申請を行う場合は、書面などの代わりにスキャナによる読み取りなどで作成した電磁的記録を送信することによって申請ができるようになります。

 

出典:財務省 令和6年度税制改正大綱

 

税理士登録しないと不利?

税理士登録をすれば、税理士の独占業務を担うことができますが、登録の有無で仕事の力量に差がつくとは限りません。税理士事務所や税理士法人で働く場合は、税理士の監督下で税理士の補助業務を行えます。近年は、「税理士(未登録可)」という求人もよく見られるようになっています。

 

一方で、税理士の人数でクライアントからの信頼を得ようとする税理士事務所などは、採用にあたって税理士登録をした人を求める可能性があるため、税理士登録をしておいた方が無難でしょう。

 

必要に応じて税理士登録の検討を

独立を考えていなかったり、自身で資格維持費用の負担が必要だったりする場合は、税理士登録をすることにメリットを感じない人がいるかもしれません。比較的規模の大きい税理士事務所などでは、税理士の資格を取得していなくても、業務を行うことができますし、事業会社に勤務する場合も、税理士登録が求められることは多くないかもしれません。

 

一方で、2人以上の税理士がいれば税理士法人化できるため、税理士資格を有する人材を求める事務所の場合は、登録をした税理士の方が求められやすい人材になるでしょう。

 

税理士登録は、税理士試験の合格者が全員やらなければならないことではありませんが、自身のキャリアを考えるにあたり、必要に応じて登録するようにしましょう。

 

まとめ:AGSグループでは税理士試験合格から資格維持まで継続的に支援

約100人の税理士が所属するAGSグループでは、税理士資格の取得を奨励しており、税理士試験の合格から資格の維持まで、継続的に支援しています。

 

税理士試験合格に向けては、税理士試験受験生を経済面や環境面でサポートする制度も設けており、試験勉強と仕事を両立しているメンバーも多くいます。支援制度についての詳細は資格取得支援をご覧ください。

 

また、税理士登録や税理士資格維持のためにかかる以下の費用も、AGSグループで負担しています。

 

  • 税理士会登録免許税
  • 税理士会登録手数料
  • 税理士会入会金
  • 税理士会会館建設費

 

官報合格を果たし、晴れて税理士登録をしたメンバーの中には、「名刺に税理士と記せるようになり、クライアントから信頼を得られている実感がある」と話す税理士もいます。

官報合格をした新人は、税理士登録に向けて今まさに2年間の実務経験を積んでいる最中です。

 

AGSグループでは、引き続き税理士試験合格を目指すメンバーたちが仕事と勉強を両立でき、税理士たちが専門性を高めながら活躍できる場の提供に尽力してまいります。

  • AGSmedia編集部

    監修者

    AGSmedia編集部

    株式会社AGSコンサルティング

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